皮肉にも、それは記憶喪失によって起きた奇跡だった。


「なんだか、不思議だよね。私たち、あんなにいがみ合ってたのに、今じゃ雨音さんが一番の友達になってるなんて」


「北園さん……私も、同じことを思ってたよ……」


まさか、同じ気持ちだとは思わなかった。

だけど、それだけ私たちの距離が近づいたってことだ。

それは、素直に嬉しい。


「あのね、雨音さんのこと梓って呼んでもいい?」

「……え?」

「雨音さんだと、どこか他人みたいじゃない?」


あ……そっか、友達って下の名前で呼ぶものだもんね。

あんまり苗字っていうのも、聞かないかも。


「私も、雪乃って呼びたい……」


向けられる笑顔に、同じように笑顔を返す。

すると、嬉しそうに私の両手をとった。