【梓side】


翌日、泣き腫らした目をしっかり冷やして学校へとやってきた私は、雨に濡れた傘を静かに閉じて校舎へと入る。


今日は、生憎の雨。

だけどいつからだろう、私は晴れよりも雨が好きになっていた。


それはきっと……泉くんと会えるんじゃないか、そんな気にさせてくれるからなんだろうな……。


「あ、おはよう雨音さん!」

「……えっ……?」


突然挨拶をされてギョッとすると、そこには笑顔で手を振る北園さんがいた。


今は、登校して来るには1時間早い時間だ。

私はピアノ練習のためにきたけど、北園さんはどうしたんだろう?


「体は大丈夫?心配してたんだ……」

「北園さん……う、うん……だいぶ良くなったよ。それより、どうしてこんなに早い時間に……?」

「あ、それは雨音さんに会いたかったからだよ」


会いたい……なんて言ってくれるんだ。

下駄箱で北園さんと向き合うと、なんだか不思議な気持ちになる。


こうして、北園さんと笑顔を交わす日が来るなんて、誰が想像してただろう。