「笑いごとじゃない、自分のことをそんな風に卑下しないで。八雲のこと……心から想ってくれる人がいるはずだから」
それはきっと……私じゃない誰か。
私の心には、泉くんしかいないから、代わりとか、そういう気持ちで八雲の傍にいることは出来ない。
「そっか……それが梓なら良かったけど……。梓の心の中に、俺はいないみたいだね」
少し寂しそうに笑って、八雲は怪我していない方の私の手を握った。
「八雲……」
「梓こそ、俺が好きになった人のこと、卑下しないでよ。雨音は、そこらへんの女より魅力的なんだからさ」
「っ……私は、そんな……っ」
誰かに好きになってもらえるような人間じゃない……そう言おうとしてハッとした。
それは、八雲の私への想いを否定してしまう気がして……。


