「私……」
「はいはい、梓にちょっかいかけないでね。俺が先約だから」
「あっ……」
すると、ツカツカと私の傍へとやってきた八雲が、私の肩を抱き寄せる。
「白石……」
「本気で奪う気ないなら、引っ込んでてよね」
ニッコリと、毒を吐く八雲に、泉くんは苦い顔をする。
そして、泉くんは私に視線を向けた。
「……俺は、雨音との出会いを無かったことにしたくない」
「えっ……?」
「どんなにすれ違っても、俺達が出会ったことには意味があるって、信じてる」
泉くん……。
それは、私が否定した泉くんとの運命を肯定するような、そんな言葉だった。
「……梓、今は考える時間が必要でしょ、俺に任せて」
「八雲……?」
悩んでいると、八雲がそう耳打ちしてくる。
驚いて顔をあげれば、パチッとウインクされた。


