「雨音、それ……行かねーとだめか?」
「えと……」
八雲と会うわけじゃないって言った方がいいかな。
でも、約束無しでも八雲は音楽室に来るから、あながち間違いでもない。
「雨音」
泉くん……なんで、私のこと引き止めるの?
私は、泉くんのことを忘れようって、必死なのに……。
こんな風に触れられたら……どうしても傍にいたいって望んでしまうから……。
早く、この手を振り払わなきゃ。
そう思って泉くんの手を外そうと一歩前に踏み出すと、私の腕を掴む泉くんの手に力が入る。
泉くんの顔は必死で、私はその場から動けなくなってしまった。


