違和感は、それだけじゃなかった。
授業中、左利きの私は、捻挫で痛めた左手を庇うために右手でノートをとっていた。
｢っ……はぁ……｣
だめだ、やっぱり右手は難しいな……。
文字を書くスピードが先生の黒板の板書に間に合わずに消されてしまう。
｢雨音、左手まだ動かせねーだろ、これ写せ｣
泉くんが、私に書き留めたノートを貸してくれる。
優しくしないでなんて、酷いこと言ったのに……。
もしかして、机の落書き消してくれたのも、泉くんなんじゃ……。
｢……あり、がとう……｣
この優しさが、いつか突然消えてしまったら……。
私は、失うのが怖くてたまらない。
泉くんからノートを受け取りながら、私はやっぱり不安になった。
