「借り……返すっつったろ」 「借りって……まさか、傘のこと?」 泉くんが音楽室に来た時、確かそんな事を言ってた。 そんな、律儀に覚えてたんだ……。 それに、胸がポカポカと温かくなる。 「そういうことだ、ほら」 「あ、ありがとう……」 差し出される袋には、私の大好きなイチゴミルクキャンディ。 その重さに、私はそれだけで幸せな気持ちになる。 「本当に、嬉しい……」 泉くんは、優しくなった。 もともと優しいけど、それ以外にこんな私を気遣ってくれているのが分かる。