葬式には俺も参列する事になった。



泣きじゃくる小鳥をこんな時でも治樹は小鳥の背中をさすって側に寄り添っていた。



治樹だって…辛いはずなのに。



俺は黙って治樹の隣に座った。


「…治樹」

「鷹哉……あのさ……俺トイレ行ってくるから小鳥の事頼んで良いかな?」

「あぁ…うん」

「ありがとう………小鳥ちょっとごめんな?」


治樹は弱々しく微笑んだ。そして席を立った。


俺は治樹が座っていた位置に移動する。
治樹が用を足しに行ったのではないことはなんとなくわかった。


泣いている小鳥にどうしていいかわからない…治樹みたいに背中さすってやればいいのだろうか?


小鳥の背中に手を伸ばすと、突然小鳥が立ち上がった。


「………ふグッ……お兄……ちゃッ……」

「小鳥…治樹すぐ戻って来るから待ってろ!」


俺の言うことなんか聞かずに小鳥は行ってしまった。


小鳥が誰よりも信頼している治樹にすがりたい気持ちはわかるけど…でも、今はダメなんだ。


俺はすぐに追い掛ける。


2階に行くと、小鳥は治樹の部屋のドアの前で立ち尽くしていた。


治樹の部屋から治樹の泣き声が微かに聞こえる…。



あの治樹が戻って来られないくらい涙を流していると思うと、胸が締め付けられるように痛かった。



俺は小鳥の腕を掴んで、小鳥の部屋に連れて行った。


「…わたッ…し……ふゥッ…お兄ちゃんも……ツラいのに…ヒグッ…最低……」

「いいから…何も考えんな。治樹の代わりになんねぇかもしれねぇけど……側にいてやるから………クソ…俺も涙止まんね……」

「鷹哉ぁ……」


俺は弱々しく涙を流す小鳥を引き寄せて抱き締めた。



この日俺は家に帰らずに、一晩中小鳥に寄り添った。




人が死んでしまうことがどれだけ悲しい事なのか…。




そして、この永遠の別れは誰も予測する事なんて出来ない。




突然訪れるものだという事を思い知らされた。