恋人は魔王様

「……意地悪、鬼、悪魔っ」

思いつく限りの悪態をつく。
が、この暗闇に二度と置き去りにされたくなくて、手はキョウの腰に回したまま離せない。

「覚えてなかった?俺、悪魔だって言ったでしょう?」

ああ、そうだった。
すぐに忘れてしまう。
魔王に悪魔って言ったところで、それ、悪態にはならない、か。

私から離れようとするキョウに、抱きつく手に力をこめる。

「本当、ユリアは情熱的だよね。
ここでしたいの?」

軽口の冗談に付き合うような気力は、微塵も残っていなかった。
私の瞳には、知らず涙まで溜まっている。

「もう嫌なの、ここ、怖い。
お願い。明るいところに連れて行って」

「人にお願いするのにそんな高圧的な言葉遣いはないんじゃない?」

返ってくるのは心を凍らせるような冷たい声。

「お願いします、魔王様。
私を明るいところに連れて行ってください」

「嫌」

真剣に頼んだ私に対し、あざ笑い、からかうように笑いを含んだ声。
私は思わず顔をあげる。

多分、私の顔は不安に慄き、今にも泣き出しそうな顔をしているのだと思う。

もちろん、私からは何も見えない。
真っ暗なんていう限度を通り越している。
そこに広がるのは、まるで、瞳を閉じているかのような無限の暗がり。

いるはずのキョウさえ全く見えないのだ。
私はただ、まわした手の感覚と、肌にかかる呼吸と、耳に入る鼓動の音を信じるほか無い。

「こんなに素直でいい子になるなら、ずっとここに閉じ込めておきたいな」

楽しそうに言うと、再び、嵐のように情熱的なキスに浚われた。