「俺の恋人になれ」

キョウは冷静に聞いてくる。
背中では、響く怒号、喧騒。
鼻につく、硝煙の匂い。むせ返るような血の匂い。

「だって、契約済んでるんでしょ?」

今更何を、と、思う。

「俺からのは、ね。
 ユリアからもキスしてくれないと、相互契約にはならないんだよ。
 言ってなかったっけ」

聞いてねぇよっ!!って突っ込みはきっと、今、このときのためにある言葉だよね?


「なに、それ。聞いてないし。
 だいたい、何で今言うの?鬼、悪魔っ」


確実に脅迫でしょっ

半泣きの私を見ながら、くすり、と、キョウが笑った。

「悪魔の王様だから魔王なんだけど」

ううう〜〜〜><その設定、サイアク。


「それとも、ここに置いて帰ろうか?」

キョウが私の肩に手を置き引き剥がそうとするので、慌てて抱きついた。

「やぁっ
 なる、なる。
 恋人になるからっ

 お部屋に返してっ」


もう、冷静な部分なんて全てどこかに飛んでしまって。
部屋に返してくれるなら、ほかはどうでも良いと思うくらい混乱していた私は、自ら恋人になることを宣言してしまった。