恋人は魔王様

「ただいまー」

「おかえりなさい、百合亜ちゃん」

珍しく母親が出迎えてくれた。

「あらー、こちらの方はどなた?
 パパの若い頃にそっくりだわ♪」

っていうか、ママは、キョウしかみていない。



……つまり
ママは≪珍しく私を出迎えてくれた≫のではなく。

私とキョウが道路にいるところを目にして、キョウ目当てで出迎えてくれたに違いない。(っていうか、アレを目にしていたなら是非共助けて欲しかったんですけど?!)

芸能人でも、一般人でも、ホストでも、「イケメン」を見ると夢中になってしまうママの悪い癖を思い出した。


ちなみに、一応念のため言い添えておくけど、キョウは私の父が若い頃には、微塵も似ていないんだから!!

「ユリアさんとお付き合いさせていただきたく、ご挨拶に伺いました」

・・・・・・

私は言葉を失った。
どこぞのエリートサラリーマンかというくらい、キョウは丁寧にお辞儀なんかをしているのだ。

さっきまでの尊大な態度を醸しだす人物とは、もはや別人。

「お忙しいところ、唐突に申し訳ありません」

柔らかい口調に丁寧な物腰。
それに、言わずと知れた、整った顔立ちが相俟ってもはや≪この人が売ってくれるものなら、保険でも事務用品でも家でも船でも金融商品でも怪しさ満点のツボでも何でも買います!≫と言わしめそうな雰囲気すらある。

「そんなご丁寧になさらなくて結構ですのよ。
 まぁまぁ、立ち話もなんですから是非おあがり下さいな」

こういう、若干非日常の匂いが漂うかしこまった雰囲気が大好きなママは、あっという間にキョウのペースに乗せられて、彼を、家の中に上げてしまった。



なぁんて警戒心のない人だろう……
我が母ながら不安を覚えて一人玄関に取り残される私であった。