恋人は魔王様

「ユリア」

動揺していた私に届いたキョウの声が、思いがけず低くびっくりした。

思わず顔を上げると、その表情からは厳しさとか冷たさとかそういうものしか漂っていない。

周りの温度が5度くらい下がりそうなほどの、険しい表情に私は思わず後ずさろうとするが、キョウは先に私の手首を掴んだ。



「な…に……?」

理屈より先に、心が闇に支配される気がして私は思わず息を飲む。

漆黒の闇のようなキョウの瞳が、底なしのようで恐ろしさを誘った。

息もつけないような強さで、抱きすくめられ、身じろぎできない。

私は思わず強く目を閉じた。



「俺以外のモノに興味を持つな」

耳元に聞こえる、温度も音程も低い声。
支配者の声音(こわね)。

・・・・・・

いやいや、それってただのジェラシーでは?


と、軽~く突っ込みたい自分と、怯える自分が心の中に同居する。



「ごめんなさい……」

でも、口をついて出たのは、今にも消え入りそうに怯えた謝罪の声だった。

もちろん、本当は分かってる。
恋人でもなんでもない唐突に現れたヤツの根拠のないジェラシーに謝る必要はないことは。

だが、理屈じゃないのだ。

心の奥が、凍りそうなほど冷え切って、痛い。
このままじゃ、凍らせた挙句手でばらばらに握りつぶされそうで、ひたすら怖かったのだ。






……金輪際、名前を尋ねるのは止めにしよう。



なんとか、キョウから解放してもらえた私は、とりあえずそれを強く心に誓って自分の家の扉を明けた。