恋人は魔王様

「なななななな、何、今の?」

私は呆然とする。

目の前から『忽然と』人と車が消えたのだ。ほんの一瞬のうちに。


これって、コンピュータ・グラフィック?

まさかね。

じゃあ、あれだ、あれ。

超~~~~大掛かりなマジックだ。

種も仕掛けもあったりして。

彼は今から日本で売り出す美形マジシャンなんだ。

すごく人気が出るんだろうな~。友達に自慢しちゃおう☆

で、きっともうすぐ、ドッキリでーす♪なんて、看板引っさげたスタッフが笑顔でやってくるんだ。



「ユリア、緊張してる?」

キョウが訝しげに、立ちつくしている私を見た。

だって、いつまでたってもスタッフが出てこないんだもんっ

私は思わず頬をつねる。
ちゃんと痛い。


……ものすごく残念だけど、これは夢なんかじゃなさそうだ。



「そうやって、痛めつけるのが好きなの?
 そういう性癖なんだね。
 ちゃんと覚えておいてあげる」

何かを誤解したキョウは楽しそうに呟いた。

「違いますっ
 だって、夢じゃないかと思ったんだもん!
 夢じゃないかと思ったときは、人は頬をつねるように出来てんのよ。
 特に現代日本人!」

適当なことを早口で言って誤解を訂正した後(訂正できた自信はまるでないけど)、私はキョウに確かめた。

「今、車と人……えっと、名前なんだっけ?……、消えたよね?ね?」