私はそれから数日間、引きこもりを貫いていた。

ママはもちろん「初めての失恋に深く落ち込む娘」を慰める自分、に酔っていたので、私を強引に学校に連れ出そうとはしなかった。

あ、ママが勝手に舞台を見に行くのはいつものことなので気にしない。

時折、私の元に誰かが来てくれるようだったけれど、私は一切の面会を断った。
泣きすぎて、耳が痛い。
鼻も、喉も痛い。

よくもまぁ、ここまで泣けるもんだと思う。

お気に入りだったクッションは、捨てるしかないような残骸へと姿を変えた。

シャワーを浴び、食事を食べ、部屋に閉じこもって泣き暮らす。

さすがに、涙もかれ果てたようで、土曜日にはようやく、お気に入りのCDを聞いたり、ぼーっと本を読んだりすることも出来るようになった。

来週の月曜日からは、学校に行こうかなーって。

そうだ、もう。
魔王様も、マドンナ・リリーも、ベネチア旅行も妄想だったんだ。



私はようやく、そう受け止められるようになるまで回復していた。
何もない左手の薬指に目をやることも、もう、なくなっていた。