「もう、ユリア様。
時間が無いんですから、真剣に聞いてよね」

ジュノが言う。

「はい、すみません……」

私は何故かその剣幕に押されてしゅんとなり、今度は真面目にジュノの話に耳を傾けることにした。

だから、時間が無いという言葉はそのときは軽くスルーしてしまったの。

「あれから、屋上に行ったら、そこには虚ろな目をした桧垣がいて……」

「フナコシさん、ここは話を分かりやすくするためにフルネームで、あるいは下の名前で教えてくれない?」

私は話の腰を折る。
ジュノは唇を尖らせたが、すぐに話を続けた。

「はいはい。まったくユリア様我侭度合いだけは魔王様並ですよね」

それは余計な一言だし、そこまでの我侭は言っちゃいないけど、黙っておく。

「で、颯太が、今にも飛び降りようとしてたんだ。
面白いから見てたんだけどね。
ほら、人が飛び降りる現場ってそうそう立ち会えるものじゃないし☆」

飛び降りを止める、とかいう人間的感性を期待するのが無駄というものだ。
私は頭を抱えながら先を促す。

「だけど、残念なことに颯太が僕に気づいちゃって。
ふと、歩みを止めた」

心底残念そうに言うから、手に負えない。