――目が覚めたとき。

私はとても居た堪れない気分で一杯だった。
切なくて、胸が苦しい。

「起こした?」

耳元で聞こえるのはキョウの声。
真っ暗で、何も見えない部屋だから居る事にも気づかなかった。

ううん、と、声も出さずにかぶりを振る。

私からは見えなくても、キョウには見えるはず。

「大変なのね」

「マリアが拗ねて、本気で戦争しかけてこようとするからさ。
まいったまいった。
もちろん、なんとか手を尽くしてことなきを得たけどね」

軽い口調で言うが、その声はこころなしか疲れている、気がした。
戦争といえば、国同士の戦い。
いくら人間界と魔界は違うとはいえ、それを食い止めるとなれば……よほどの手を尽くさないといけないに違いない、なんて勝手に想像してみる。

「で?」

で、という一言が。
無言になった私の心に突きつけられた、気がした。

キョウが背中越しに私を抱きしめる。
腕枕のように頭の下に手を回されても、肩からそっと手を下ろされても、私は身じろぎ一つ出来なかった。

「ユリアはどうして泣いてるの?
俺が居なくて淋しかったから?」

茶化すようないつも通りの声に、私はさらに涙を溢れさせずにはいられない。
いつものように、軽口で返したいのに、言葉が何も浮かんでこない。