パチリ、と指が鳴り、次の瞬間私は雑踏の中に居た。

陽気な空気。
人々のざわめき。
いつもより強めの太陽。
生活臭と魚の匂いが混ざったようななんとも言えない香りが鼻をつく。

ここ、どこ?!

耳に馴染みの無い言葉が聞こえる。
しかも、昼間。

今までの感覚だと日本は今夜の8時くらいだと思うんですけど?

ここは、確実に、昼間。
そして、謎の民族衣装風の悪魔とセーラー服の私は、明らかに場違い。

キョウは動じることも無く、私の手を引いて身近にある高級ブランド店へと足を薦める。

「Buon Giorno!」

見るからに高級な黒いスーツを、完璧に着こなした長身の彫りの深い男性がにこりと笑いかけてくる。

えええっと、今、何て?

なんて、私が戸惑いまくっている間に、キョウは淀みなく会話を続けていく。
店員が服を探しに言った隙に話しかける。

「ねぇ、なんて言ったの?」

美形悪魔は私の顔を見て、いかにも小ばかにした笑みを浮かべる。

「分からなかったの?」

ううう〜〜〜〜意地悪っ。
悪魔の言葉なんて分かるわけないじゃん!

私は平凡な日本の女子高生なのっ