恋人は魔王様

「まさか。
あいつ、まともに喋れると思う?」

きらり、と、良くない感じにジュノの瞳が煌いた。
キョウのそれとは違うけど、少しだけゴールドを思わせる光を帯びていた。

「じゃあ、誰によ」

私が知る限り、もう、他に登場人物など居ないように思えた。
まさか、私に尋問、などとは言い出すまい。

にやり、と、キョウが笑う。

「桧垣に」

……はぁ?

私は頭を抱える。

「あのねぇ。
今、桧垣はまともに喋れないって言ったばかりでしょう?」

どの口が言ってるんだ、どの口が、と。
悪態の一つでもつきたくなった。

あれ?と、心底きょとんとした顔で、ジュノが首を傾げる。

「桧垣って言うのは、ユリア様で言うところの早乙女と同じなんだよね?」

「そ、そうだけど」

早乙女っていうな、早乙女って。

「じゃあ、桧垣の兄も桧垣ですよね?
僕、何か間違ってます?」

とてつもなく無垢な眼差しで真剣に尋ねられた私は、なぜかとてつもない疲労感と眩暈を感じずにはいられなかった。