恋人は魔王様

「どうしたんですか?
顔、赤いですよ?」

余計なことを言ってくる、天然の悪魔が、目の前に一人。
いや、一匹。
さっきまでタメ口だったのに、急に丁寧語になるあたりに、実は天然じゃなくて悪意があって言ってるんじゃないかという疑惑が浮かんでくるが、もう、そこは追求しないことにした。

これ以上自由気ままな発言に付き合っていたら、こっちの身がもたないんだもの。

私は頭を抱えながら

「なんでもないわ」

と、足をすすめた。

こんなところで、警察や学校関係者に出くわして、話が大きくなるのは避けたいところ。



近くの喫茶店でコーヒーを啜る。

理由はもちろん「二時間ドラマの定番!喫茶店で打ち合わせっ」などと、ジュノがはしゃいで先に入っていったからだ。

「で、これからどうするの?」

なにせ、探偵は掟破りの力を持っているのだ。
私が計画することも、手伝うことも一つだってないだろう。

「後は、尋問かなぁ?」

「桧垣に?」

っていうか、桧垣に尋問するんなら昨日やればよかったんじゃない?
と、私は思う。

っていうか、桧垣は今、まともに喋れるんだろうか。
あまり、考えたくないけれど。

昨日の、獣のうめき声を髣髴とさせる地を這う咆哮を思い出し、私は気分が悪くなった。

あれは、まっとうな人間が出せる声ではなかった。