恋人は魔王様

……………

私は青空が見えるその屋上で言葉もなくして立ち尽くしてしまった。

今、こいつはなんて?

「ユリア様、行くよ。
長居すると面倒なことになっちゃうし、そうなると探偵ごっこもしづらくなるからさぁ」

にこり、と、売れっ子ナンバーワンのホストのような人好きのする笑顔を浮かべると、ジュノは踵を返して歩き出した。

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ってよ!」

私はありえないくらいどもって、立ち止まってくれないジュノの背中を追った。

「何?」

校内に戻り、またもや念力っぽい何かで鍵を元通りに掛けたジュノは、ごくごく普通の好青年のようなとっつきやすい笑顔で私を見た。

「っていうか!
今、何をしたの?」

「何って?
その場所に行ったら、見えるでしょう?
見たい風景が」

「は?」

あまりにも当然のことのように言うので、私のほうが首を傾げる。

くすくす、と、頭の中に声が響いた。

「キョウ?」

私は思わず指輪に向かって声をあげる。

「ユリア?捜査は順調なようだね」

脳内に直接声が響くのは、不快だったが仕方が無い。

「お陰さまで。
だけど、ジュノが変なことを言うの。現場に行ったら過去の風景が見えます、的な」

的なじゃねぇよ、と、ジュノが呟くのはこの際無視。
くすくすと、笑いながらキョウが続ける。

「俺にももちろん、見えるよ☆
だから、ユリアの部屋に行ったらユリアが夜な夜な一人ベッドの上で……」

うわ、なんだかあからさまに嫌な展開の会話を続けようとしてません?
この正真正銘の魔王様ってば!

「ごめん、キョウ。
私急いでるの、またね」

私は電話を切るような気分で、とりあえずそう言ってみる。

照れちゃって、可愛い、とかなんとか脳内に響いている声は、この際無視することにした。