恋人は魔王様

「……やっぱり、暗闇で人が発狂するって知ってるんじゃん」

私は呆れた声で呟く。

「そりゃね、俺が何年悪魔やってると思ってんの」

言われて、はっとした。
キョウは見た目20代半ばって感じだから、何も思わなかったんだけど。

……本当は一体、幾つなんだろう。

「何年、悪魔をされてらっしゃるんですか?」

何か質問をするとき、時折雰囲気呑まれて慣れない敬語が出てくる。

「そうですねー、かれこれ千年ってところでしょうか」

私の敬語を真似るように、インタビューに答える野球選手のような気軽さでキョウが言葉を発する。

……千年前って平安時代?!

私は途方も無い話に眩暈を覚えた。

「ほら、俺が浚った処女の話、聞きたくなったでしょう?」

キョウが得意げに言う。

「いいえっ」

話がどうしてそこに飛ぶのか全く分からない。

「絶対に気に入ると思うんだけど」

と、なぜかぶつぶつ言っているキョウの手を、私は一際ぎゅっと握った。



何でもありのこの世界で、この手だけはなぜか、放してはいけない気がしたの。