彼女の物語を読んでいるうちに、『この物語の主人公の男の子は、僕だ』と思うようになっていった。
 
別に、森下さんが僕をモデルにしたと思っているわけじゃない。

ただ、男の子に自分の姿を重ねざるを得なかった。
 
特に、『何度も引っかかってしまう自分はクラスにとって必要じゃない』という男の子の考えは、

『足が遅く、パスもドリブルもできない、体力もない今の自分はチームにとって必要じゃない』と考えている僕にそっくりだった。
 
男の子の葛藤を描く三枚目の絵を描き終えた週から、
全国大会の予選が始まっていたけれど、
僕はベンチ入りも果たすことができなかった。
そして今は、四枚目の絵で あるイルカを描いている。
 
二枚目の女の子が登場するシーンでは、彼女を大きく描いた。

身に着けているものは、白色のワンピースのみ。
これにはかなり時間がかかった。意識したわけではない けど、僕が描いた女の子は森下さんに似ていて驚いた。
 
この話を作ったのが森下さんだったからというのが大きいと思うけど、なんだかそ れだけではないような気もする。
 
とはいえ彼女に勘付かれてはいけないと思い、セミロングの髪の毛を伸ばし、ロングヘアにしておいた。