「この目玉焼き、美味しいなあ」

食卓でしみじみとじいちゃんが言う。

見ると、相変わらず美味しそうに食べている。


じいちゃんはきっと今、今日が僕と過ごせる最後の日だと思って生きているんだろう。


そして、もし明日僕が生きていてまた朝ご飯を作ったならば、

じいちゃんは僕とまた会えたことに感謝し、名前を呼んで「おはよう」と言い、

美味しそうにそれを食べるんだろう。


そういえば、と僕はふと思う。


合宿から帰ったとき、それはもう夜の九時半で、じいちゃんはもう寝室にいる時間だった。


普段、僕が帰る時間には、じいちゃんはたいてい店の奥で本を読んでいて「おかえり」と言ってくれる。

昨日の夜、それがないことに寂しさを覚えたのだろう。


僕は寝室に顔を出し、寝ているじいちゃんに囁いた。


「ただいま、帰ったよ」……と。


そしてじいちゃんが生きていてくれることに感謝して、安心して眠りについたのだ。