おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー



ふたりで並んで屈んで、小さな子たちに混ざって釣り糸を垂らす。
不服そうに眉を寄せて、


「ほんと、さすがに恥ずかしいことしてる自覚持った方いいよ、ミコ姉は」


周りの喧騒からだろう、わざわざ聞こえるように耳打ちされて堪らず頬を膨らませた。


「昔から好きなんだから仕方ないのっ」


「ふーん……、お、釣れた」


私と話しているうちにも達久は器用に釣竿を操って、黒いヨーヨーの輪ゴム部分に金具が綺麗に収まった。


「え、早いっ!上手い!!」


すごーい!と達久を見上げると、私の顔を見て、ふはっと達久が笑った。


「目、キラキラさせすぎ」


「えっ、そんなかな!?」


改めて指摘されると、さすがに恥ずかしくなってくる。
集中して私も早く釣らないと、と狙いをピンク色のヨーヨーの輪っかに定める。


けれども何度も輪っかから狙いがスカっと外れて、周りの小学生が続々と連れていく中、悲しいことに中々釣れない。


「ミコ姉、ヨーヨー釣り好きな割に毎年釣れないよね」


「うう、高校生になったしさすがに釣れてくれると思ってたのにー…」


「ほら、もうちょいこっち」


「あ、そか……」


「そっちじゃなくて」


達久の手がギュ、と私の両手を包む。
驚いて、びく、と震えてしまう。その振動が、きっと達久にも伝わったのに。
彼はなんの迷いもなく私の手を誘導して、すっと輪っかの中に金具を入れた。


その瞬間、私も達久の手のことなんか頭の中から吹き飛んで。


「すごーい!やっと入った!達久すごいね!いっつも上手いね!」


わーい!と、ゲットしたヨーヨーを片手に達久を振り返ろうとしたところを、わしゃわしゃと頭を撫でられた。


「ちょ、達久っ」


「……ミコ姉って、ほんとガキっぽい」


「そんなことより髪乱れるからやめてよ!」