なんとも言えない空気に達久から視線を逸らした。
意外とそういうところを見ているんだ、とか、私に興味無いわけじゃないんだな、とか。そんなどうしようもないことを考えてしまいそうになって、とっさに目の端に見えた店に無理矢理興味を持っていく。
「あ、ヨーヨー釣りだよ」
「……高校生にもなってまさかやりたいとか言い出すんじゃないよね?」
「うるさい中学生、そのまさかだよ。私お金出すからさ、やろうよ。
おじさん、2人分!」
そう言って、巾着袋から財布を取り出す。
けれどそれより早く、達久がお金をおじさんに渡していた。
釣り竿を二人分受け取った達久は、そのうち一つをずいっと私の方に押しやって。
「はい、どーぞ」
「え、あ……ありがと」
釣り竿を渡されながら、背伸びしてる中学生を見るような気持ちと、素直に嬉しい気持ちがないまぜになった、ふわふわと落ち着かない気分になる。
「お金後で返すよ」
「いいよ、別に大した額でもない」
「……そっか」
初めてだ。こんなに一緒にいたけれど、達久になにかを奢ってもらったことなんかない。幼い私たちにとっては割り勘なんてもちろん当たり前だったけれど、だからこそたったこれだけのことで、私も少し背伸びしたような気分になる。
私たちの関係が、やっぱり昔と変わっていく。
初めてだ。達久が私を、リードしてくれてるなんて。



