おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー



「ねえっ、まずは何食べよっか」


悠里がこちらを振り向いて、少し遠く離れた私たちにも聞こえるように声を上げる。


「俺はお好み焼き食べたい!」


さっきまでの寂しげな表情などまるで最初からなかったように、佐野は悠里に満面の笑みで答えて、小走りで彼女の元へ駆けていく。


「えー、粉物ならたこ焼きでしょ?」


隣に来た佐野を小突いて、不満げに悠里は唇を尖らせる。


「それじゃあどっちも奢ってやる」


悠理の我儘を全部受け入れて幸せそうに笑う佐野は、素直にカッコイイ。
相手が誰を好きでも関係ないのだと、その横顔が物語っているようで、あんなふうに強かったら私も恋を出来るのかもしれないと思った。


「ミコ姉はなに食べんの」


悠里が佐野に気を取られてる間にするりと抜け出したらしい達久が私の隣に並ぶ。


「うーん、焼きそばもいいけどたこ焼きも食べたいし、本当はわたあめも食べたいけどチョコバナナも…」


「食い意地はりすぎ」


デブになるよ、と小声で呟かれたそれも私の耳にはばっちり届いているから、頬を膨らませて達久を睨む。


「達久だって最近食べすぎだよ」


「俺は成長期」


「あたしだって、成長期だもん」


「身長二年前から変わってないじゃん」


「む、胸とか……」


苦し紛れに絞り出した単語に、達久の視線が下がる。


「……まあ、確かに」


「そこで肯定されても恥ずかしいんですけど…」