おひとつ、屋根の下ー従兄弟と私の同居生活ー



どういうこと、と尋ねようと口を開いた瞬間、


「ねえねえ、さっきから何喋ってるのー?
私のことも混ぜてっ」


ぱっと振り向いた悠里が、するりと達久の腕を取った。
ぎょっと驚いた顔をしたのは、私と佐野だ。達久は慣れたように悠里を押しやろうとしている。


「……悠里先輩、近いですって」


「やだやだ、はぐれないように腕組んでて!」


「そういうのは佐野先輩にでもしてくださいよ…」


「そうだぞ悠里!俺のここ空いてるんだぜ!?」


必死の形相で言い募る佐野の肩をぽんぽんと叩いて、振り向いた彼に首を横に振ってみせた。
すなわち、無駄だ、と。


「み、美琴〜〜!」


泣きついてくる大男を宥めながら、私達はお参りを済ませた。
人混みを抜けて、店が立ち並ぶ方に進んでいく。


その間も悠里は達久の腕をずっと掴んでいて、達久は拒否するのも諦めたのかされるがままになっている。
それを少し離れた位置からついて行っていると、佐野が隣からぽつりと呟いた。


「……俺は数合わせに使われたってことか…」


ぐすん、と鼻を啜る音が隣からきこえて、さすがに少し気の毒になる。


「ごめんね、私も知ってたから、先に言えばよかったね」


よしよし、と佐野の背中をさすってから、側にあった屋台で二本いちご飴を買って、ひとつをこの哀れな友達に差し出した。
ありがとう、と呟いて佐野は大柄な体型には似合わない小振りな飴をちろちろと舐め始めた。


「悠里のこと、いいなって思い始めたの、実は1年も前からなんだ」