神社につくと、今年もたくさんの人で賑わっていた。
毎年神社の中だけでなく、周りの道路も長く巻き込んで行われる夏祭りは、前にきた時よりもさらに多く店を出している気がする。
鳥居に入る前にもう既にいろいろ買いたくてたまらない。たくさんの声や匂いに引きづられて、目移りしてしまう。
……って、だめだめ、気合を入れろ美琴っ!
ぐっと握りこぶしを作って、心の中で喝を入れた。
今日は呑気に遊びに来たわけじゃない。
悠里と達久の仲を取り持つための、いわば仕事で来たようなものなのだから。
百面相になっている私を訝しげに見ながら、達久は進む先を指差して言った。
「まずはお参りするだろ?」
「うっす!」
「なんでそんな気合入ってんの……」
本堂に向かいながら着信を確認すると、悠里から鳥居の近くにいると連絡が入っていた。
顔を上げると、鳥居の近くに背の高い男……佐野が見えた。
なるほど、これは分かりやすい。
いま近くを通るよ、と急いで悠里にメッセージを送って、それとなく佐野達がいる方へ達久を誘導した。
ちょうどこちらに気がついたらしい悠里と目が合った。お互い、合図のように頷きあう。
「あれ? 美琴じゃんー」
まるで偶然かのように手を振って、悠里と佐野が近付いてくる。
「……先輩たちだ」
隣で微かに聞こえた独り言は、少しの驚きを含んでいた。
「……って、蓮見くん!あれー?なんで美琴と一緒にいるのー!?」
わざとらしい高い声に、ハラハラして心臓が痛い。ダメだ悠里、そんな棒読みだと気付かれる!



