「……なにシケた顔してんの」
「え?」
「佐野先輩いなくなってそんな寂しかった?」
「……達久」
横からいきなり声をかけられて驚いた。
見ると仏頂面で佇む達久がいた。ユニフォーム姿は久しぶりに見た気がする。少し雨に濡れたのか水滴が所々彼を濡らしていて、首に巻いたタオルは飾りかと心の中で突っ込んだ。
けれど、ここにいたんだ、という気持ちがむくりと顔を上げて、どこかほっとしている自分がいる。
なんだ、いたんじゃん、ここに。
ちゃんと強くなってるんじゃん、達久。
「もしシケた顔に見えたんなら、別に佐野のせいじゃないけど」
「へえ、じゃあ雨の中買い出し行くのが憂鬱?」
「ま、そんなとこ」
正解には遠いけど、そういうことにしておいた。
けれど達久は本気に取ったらしく、
「……なら買い出し、ミコ姉行かなくていいよ。部活も無くなったし、元々頼まれたの俺だし」
「え、いいよ別に。行く気だったし」
「??
憂鬱なんじゃなかったの」
尚も食い下がってくるので、考えなしに返事なんてするもんじゃないなと反省した。
「んじゃ、一緒に行けばいいでしょ。ほら、早よ着替えてこい中学生」
「……じゃあ、そこで待ってて」
何か言いたげに、しかしそれでも何も言わずに達久は部室棟の方へ走っていった。



