「あー、雨、急に降ってきたもんなあ。
俺らもグラウンドで練習してたら降ってきたから、急遽体育館に来たんだけど、体育館割りの関係上ここも使えそうになくてさ」


「そっか、月曜だもんね。バド部とバレー部だっけ」


「そうそう。仕方ないから今日は自主練にしようかと思ってさ」


「へー、やったじゃん」


「そうそう、サッカーしなくてすんで嬉し……って美琴ちゃんダメっ!俺仮にもサッカー部副部長だからっ!華道の方が好きっていうのは内緒って言ったでしょっ」


めっ、と頬を膨らませて私にチョップしてくる姿はどう考えても新宿二丁目のそれである。
あはは、と笑ってチョップを甘んじて受け入れる。


「じゃあ、みんなもう解散していいよー!」


どこからか声が飛んできて、ぞろぞろとサッカー部集団が動き出す。


「ほんじゃ、また明後日部活でな」


「うん、お疲れー」


ぱたぱたと駆けて行く姿を見送ってから、私も早く買い出しに行かねばと歩き出す。
やっと人も捌けてきて、先ほどよりは進みやすくなった。


こうしてみると高等部の部員の方が多いにしてもちらほらと中等部の子がいる。佐野から前に聞いた話によると、中等部のサッカー部のなかでも特に有望な部員が高等部と合同練習しているらしい。


見当たらないということは、達久は中等部のほうで練習しているんだろうか。


(……って達久のこと、別に気にしなくたっていいのに)


そう心の中で誰にともなく言い訳したけれど、気になるのも仕方ない気がした。
小学生の頃から達久は、地元のサッカーチームで練習していたから、その努力を知っていたから、報われてて欲しかったのかもしれない。