「うわ、雨降ってる」


放課後、校舎から外に出ようとすると、朝は降っていなかった雨に気付いて足を止める。
たしか部室のロッカーに置き傘していたはずだから、あそこまで取りに行く必要がありそうだ。
仕方なく今履いたばかりの外履きを脱いで内履きを取り出した。


華道部の部室の共同ロッカーから傘を取り出して、いま来た道をまた戻る。
部室棟は体育館と並んで校舎の裏にあるので、ここからまた正面玄関に戻るためには迂回しなければならず、距離があって面倒くさい。
体育館の中まで入るともう少し距離が短くなる通路があるのだが、そちらを通るか。


そう思って部室棟から体育館へ抜ける通路へ足をのばしかけたものの、そこにサッカー部のユニフォームを着た生徒がごった返していて、うわあ通りづらいと泣きたくなる。


しかもサッカー部。
サッカー部はたしか中高一緒に練習してたはずで、そしてサッカー部といえば、悲しいかな我が従兄弟が所属なさってる部活じゃありませんか。


ぱっと見だけだと達久は見当たらなくて安心する。
でもこんだけ人いたらサッと通ってもわかんないでしょ、と意を決して足を踏み入れた。


するとさっそく人にぶつかって、謝ろうと顔を上げる。そこにいたのは華道部とサッカー部を兼部している異色の男子、佐野だった。
ちなみに彼はなかなか良い華道のセンスをしているので同学としてとても誇らしいのだけどそのことは後でじっくり語るとして。


「お、美琴じゃん。なんでこんなとこにいるんだ。部活棟に行ってたのか?」


人の良い笑みで話しかけられて、ついこちらも笑顔になってしまう。


「うん、置き傘取りに行ってた」