「なら良かった。もしきついなんて言われたら、うちの倉庫あんたのために掃除しなきゃいけないとこだったもん」
「頼子は私を倉庫に住ませる気だったのか」
「倉庫に飼うとも言う」
けらけらと笑いあいながら、頼子に相談できたらいいのに、と息をつく。
……頼子は信頼できる。だから、彼女に言わないのはそういうことを心配してるんじゃない。
従兄弟とベッドでキスをしたなんて、まず私が口にしたくないのだ。この気持ちは、自分の恥ずかしいところを見られたくない気持ちと似ていた。
「イトコとも上手くやれてんの?」
「う……まあ、とりあえずは」
ちょうど考えていた案件をぶつけられて、ボソボソと気持ちの伴わない回答をする。すると頼子は口元に手を当てて考える素振りをした。
「この前遠くてどれがイトコくんかよく分かんなかったのよね。
今度会ったら教えてよ、見てみたいし」
「えー、見なくていいって」
「いいじゃない、この子が美琴とひとつ屋根の下で…って想像したいだけ」
「しなくていいっ」
しかしこの機会が存外早く来たのだから、私はつくづく運が無いと思う。



