翌朝、ご飯を食べていると、もう仕事に向かう晴子さんが申し訳なさそうに謝ってきた。
「ごめんねえ、お弁当作ってあげられなくて」
「気にしないで。看護師って忙しいでしょ、晴子さん。
朝ごはん用意してくれてるだけでもほんと有り難いんだよ」
「ううー、そう言ってもらえると嬉しいけど……持って行きたい時は勝手に朝キッチン使っていいからね」
「うん、ありがとう。いってらっしゃい、叔父さんも」
「おう、ミコちゃんも、気をつけて学校行くんだよ」
パタパタと慌ただしく玄関に向かっていく叔母夫婦を手を振って見送って、私は一人食べ終えたお皿を片付けた。
ちなみに達久は部活の朝練がどうとかで、もう学校に行ったらしい。
身支度を整えて玄関のドアを開け、鍵を閉めた。
さっき渡された鍵は生身のままで、なにかキーホルダーをつけて落とさないようにしなければと頭に留めておく。
制服が夏服になってまだそんなに経っていない上、今は梅雨の最中だ。今にも雨が降り出しそうな天気では、初夏とはいえ少し肌寒い。薄いカーディガンが必要だったな、と思いつつ、前の家より少しばかり短くなった学校までの距離を小走りで進んだ。
「おはよ、美琴」
「おはよう頼子」
「無事引っ越せた?」
教室についてからの頼子の開口一番の質問に、一応ねと答える。
ちなみに無事かどうかといえば否である。



