許してないけど、この家で上手くやっていくために私は達久と普通に接する。
いくら独りよがりだって、叔父さん叔母さんたちに普通に見えてさえいれば良いんだから。
言葉にしてみると、達久の言うように酷く打算的で性格の悪い女のような気がする。
「先寝るね」
「はいはい」
「おやすみ、達久」
「おやすみ」
きちんと返してくれるあたり、どうやら彼も少しはこの茶番に協力してくれるようである。
もう私を見ていない背中を、少しの間見つめた後でリビングを後にした。
布団に入って、ギュッと目を閉じると、昼間隣の部屋であったことが蘇ってくる気がした。
柔い感触は二年ぶりだったけれど、記憶が鮮明な分、今日の方が生々しい。
二度目のキスは全く別の人とするもんだと思ってたのに、またもや相手は達久だった。
どうか3度目は、とウトウトする頭の中で願う。
ーーどうか3度目はちゃんと好きな人とできますように。



