……泣いてるの、ミコ姉。


言われて初めて気がついた。
ぱたり、ぱたりと灰色の石畳に私の涙でシミが作られていく。


来なきゃ良かったかな。


ぽつりと呟かれた言葉に私は首を横に振った。


……サヨナラが言えたから良かったよ。これで、お終い。


はは、と空笑いが涙と一緒に地面に吸い込まれていく。


胸にぽっかりと空いた空洞は、そんなわけないのにスースーするみたいだった。


ミコ姉。


しゃがんでいた彼が立ち上がったのが目の端に見えた。
黙っていると、彼は目の前に立ちはだかった。


真っ直ぐに、見つめる。


逆光だけど、表情は分かる。
あどけなく、幼い顔立ち。
身長は私と全く同じなのは知ってる。
複雑そうに、何かを噛み締める顔はたびたび私に見せる、私のためだけの表情。