鮮やかな夕焼けだった。


一面に広がる緋色と茜色を混ぜたような空、海に空が反射してキラキラと光を弾く。


見上げるほど大きな鳥居の傍で
たった二人、その美しすぎる景色を見てる。


知らない町に、ふたりきりだった。


ここがどこかも分からない。
誰もいない。


それはまだ大人じゃない私たちにとっては、セカイにふたりきりとほとんど同義だった。


――…帰らなきゃ。


思ってもない言葉を、ただ二つ年上というだけで告げなければならなかった。


――…そうだね。


まだあどけなさの残る顔と
声変わりしたばかりの、柔い高さの残る声で返事が返ってきた。


けれどどちらも動かなかった。
動く気が無かった。


動くには酷く力がいると、どこかで分かっていた。