「何ですか?前永先生」

「さすが委員、早いな~ 今日もこれを持って行って欲しいんだ。」

思わず笑がこぼれる
(これは、、やばい、不覚にもニヤニヤしてしまう)

「ん?なんでニヤニヤしてるんだ、 ?」

「い、いえ!何でもありません行ってきまする!」

「お、おう...噛んでるぞ...」

私は先生の言葉も気に止めずあの場所へと向かった




「失礼しま~す。あの~資料を...」
しかし電気は付いておらず人の気配もなかった
(誰もいない...泣)
すこし寂しい気持ちになっていると
後ろからワッ!と聞こえ

「ひぉぃぁっ!」
とこの世のものではないような悲鳴を上げてしまった。

「ははっ(笑)中田さん最高だねぇ なに?ブルースリーの真似??」
この声は...米田さんだ...。
(あぁ、恥ずかしい...友人にも聞かれたくないような声を想いを寄せてる人に聞かれてしまった)

顔を赤らめる私を見て米田さんは
「ごめんごめん。冗談だよ ちょっとからかいたくなっただけ(笑)それで?何か用??」
と言った
(無邪気に笑う顔が可愛い...。おじさんってこんな可愛いのか...、?)

「また、頼まれた資料を持ってきました。」
気にするな、気にするなと心の中で唱えながら声を落ちつかせて喋る。
しかし声は震え、心臓が飛び出そうな程に鼓動が早くなる。

「お、ありがとう(笑)ところで中田さんはなんでこんな仕事を...?」

「学級委員になっちゃって...」

「そりゃあ大変だね。まだ慣れないのにお疲れ様凜ちゃん。」
そう言って頭をポンポンする。

(え...?、り、凜ちゃん...?あ、頭をポンポン?、、し、下の名前...?)
頭の中の電卓があまりにも複雑な計算に手こずっている。
(こ、これは、やばい...)
そうしてそのまま固まってしまった。

「おーい、おーい中田さーん。ちょっと来て(笑)」
米田さんの声でハッと我に帰る

「は、はい!」
声が裏返った。私は緊張がバレないようにバレないようにと心を落ち着かせた。

「はい。これあげる(笑)」
顔がくしゃっとなるその笑顔に見惚れた。

差し出されたその手の中にはイチゴ味の飴があった。

「特別ね(笑)僕、頑張ってる子好きなんだ(笑)」

あの日の愛菜の言葉を思い出す。
“いちご飴は好きすぎて特別な存在の人にしかあげないらしい”
好き...?それは、どういう...?
違う意味と分かってるはずなのに、好きという言葉が自分を期待させている。
期待している自分が恥ずかしい。

(ずるい...さっきの頭ポンポンといい下の名前で呼ぶといい、いちご飴といい、なぜ私を期待させるのだろうか...こんな事されたら...私...)



「好き...」
その言葉を発したのと同時に涙がこぼれた。

米田さんは
「え...?」
と言い、差し出していた手を下ろした。
そして
「ごめん。僕は中田さんを好きにはなれない」
そう告げた。