「お願いしま~す。」
そう挨拶をしバスに乗り込んだ。
「お疲れ様(笑)」
と返してくれる米田さんをチラッと見ながら席に座る。
「ところでさ、凜は運転手さんの名前知ってるの?」

「う、うん、知ってるよ。資料持っていった時に突拍子もなく聞いちゃって...」

「おっ、凜にしてはやるじゃ~ん、よしちょっと待ってて」
すると向かいに座っている愛菜が立ち上がり米田さんのとこへ向かった。
(えっ!?なにするつもり!?)




・・・・・・・・・




なかなか帰ってこない。
(何を話してるのかな...)
座席から運転席までは遠いため会話が入ってこない。
しかし途中途中で愛菜に向かって笑いかける米田さんを見ると、どこか心がチクンと痛かった。
(なんだろうこれ..)

一時して愛菜がニヤニヤしながら戻ってきた。

「何してたの?」

「ふふ(笑)なんでしょ~知りたい?」

「い、いや、別に」
本音は知りたいが言葉では逆のことを言ってしまう。

「運転手さん情報げーっと!」
愛菜が小声でそう言うと同時にバスが出発した

「えっ、ホント!?」
揺れるバスの中で立ち上がってしまった。
周りの視線が痛い。

「ほら~知りたいんじゃ~ん。知りたいのは分かったからとりあえず座りなさい」 (笑)」

「はい...(涙)」
(うぅっ...愛菜め、、)

「まず一つ目ね。運転手さんは結婚してない!そしてカノジョなし!
二つ目、年齢は40歳!
そして最後、好きなものは珈琲!
そしていちご飴!
しかもいちご飴は好きすぎて誰にもあげたくないらしいよ...あげるとしても特別な存在の人にしかあげないらしい(笑)どう??役に立った???」
愛菜は感謝しろと言わんばかりの目をしている


「ありがとう。愛菜が聞いてくれなきゃ知ることが出来ない事ばっかだよ。」
自分の中での米田さんの情報が満載溜まっていくのが幸せだ。
何より幸せなのは独身で彼女もいないこと。
これを幸せと思うのはひどい女だろうか。

「でしょ~??」
愛菜は完全に天狗状態だ。

そうこう話してるうちに家の近くのバス停に着いた。

「じゃあね、凜また明日!」
愛菜はそう言って手を振る

「うん(笑)バイバイ」
愛菜は次のバス停で降りるため乗車時間が少し長い。
ちょっとでもこのバスに長く居れる愛菜を羨ましいと思ってしまった。
(こんな事思うのはひどい女だろうか...)


「ありがとうございました。さようなら。」
そう言って米田さんに頭を下げてバスを降りる

「さよなら(笑)明日も頑張ってね。」と、

返ってくる返事は優しい。

私はバスを見えなくなるまでずっと見ていた。