空色(全242話)


男は汚い。
男は狡い。

ハイエナのような生き物。
そんな風に思ってきた。

そんな私が、彼を可愛いと思った事を、自分でも驚いてしまった。

『お嬢さん、結構飲むねー』

3本目の酎ハイを取ろうとした時。
十和が苦笑したように言った。

『貴方に言われたくないよ』

もう4本を空にしたくせに。

『俺は男だからいいの!』

『そんなの関係ないし』

『あはっ その言い方、かっわいくねー』

ケタケタと笑われ、ハッと気付く。

確かに可愛くない。
ツンとそっぽを向いたまま、彼を見れないでいる。

目を合わせたら負けのような気がして……

もしかしたら自分で思っているより、私はプライドの高い人間なのだろうか。

いや、きっと高いだろう。

だから袋井にされた事も許せないのだ。

『つか寒くない? 上着ないの?』

よく考えたら肌の透けるベビードール一枚で酒をぐいぐい飲む自分。
パンツ一枚で晩酌するオヤジと大差ないじゃないの。

そりゃ可愛くないはずよね。

『上着は待機室。 そんなに寒くないから平気よ』

とは言え、いつもならこの部屋で激しく動いている頃。

何もせず話しているだけでは少々寒い。

『ほっそい腕。 着てなよ。 俺まで寒くなる』

十和は来ていたシャツを脱ぐと私に差し出す。

『自分だって半袖じゃ……』

その腕を見て、私は言葉を失ってしまった。

肩の辺りから肘(ヒジ)の辺まで続くタトゥー……

何の花だろう。
蔓(ツル)が巻き付いたように広範囲に掘られていた。

『何の花?』

『名前なんて無いよ? 現実に無い花だから』

『意外。 そんな顔して……』

『ちょっとね、無茶してた時あったから』

今となっては過去の話。
だけど十和は苦笑してみせると、私を見て言った。

「それでも一生消さないけどね」と……