凍えそうな冬とは違う。
逆に焼け付くような暑さの夏とも違う。
まるで春ののんびりとした空気のよう。
十和にはそんな雰囲気があった。
『じゃーん、お土産~』
十和は鞄からコンビニの袋を出すと床にコンと置く。
私達は前と同じようにシャワー室に入り、向き合って座っていた。
でも少し……
前より距離が近い。
『アユの好きそうなの買ってきたんだー。 ほらコレ』
十和は袋から缶酎ハイを出し私に差し出す。
「アユの好きそうなの」
まだ数えるくらいしか会ってない人間の何がわかると言うのだろう。
私の好みは私にしかわからないはずだ。
『飲んでみ? うまいから』
だけど無邪気な十和の笑顔を見ていたら、つい缶を受け取ってしまった。
タブに指をかけ、フタを開けると甘酸っぱい香りが広がる。
色は無色透明。
缶には赤い木の実が書いてあるから、赤い液体を想像してたのに。
まだ味わった事のない未知の味に恐る恐る口を着ける。
ひんやりとした液体が口に入ると香りと同じ甘酸っぱさが口いっぱいに広がった。
『美味しい』
甘さより酸っぱさが強い。
おかげですっきりと飲みやすい。
『だろ? 柘榴(ザクロ)の酎ハイだよ』
『柘榴? そういえば……』
この木の実に見覚えがある。
小学校の裏庭にあった木にぶら下がっていた実だ。
あの実は食べれたんだなと、今知った。
『前に持ってきた酒でアユが飲んでた酎ハイあんじゃん? あれに似たの探してきたんだ』
『わざわざ?』
『うん。 だって俺、アユの好みって、あれしか知らないからさ』
あ、また無邪気に笑った。
確か3つ年上だったっけ。
22か23か……
『本当に美味しいよ、これ』
何だか笑うと子供みたいで…
少し可愛い。

