空色(全242話)


指輪を買ってもらった。
可愛い洋服を見た。
美味しいオムライスを食べた。

幸せで幸せで……

『恐いな……』

なんて思う。

『恐い? 誰が?』

夜道に車を走らせ、うちに向かう十和は、フッと苦笑して応えた。

『ううん、人じゃなくて。 この幸せはいつまで続くのかなって』

貧乏性?
今までが幸せに思わなかったから、こんな風に考えてしまうのかな。

自分でも、よくわからない。

『何で? 永遠に続けようよ』

『……十和』

十和はいいな。
いつも前向きで、不幸なんて吹っ飛ばしてしまいそう。

そんな十和だから、憧れた……

『アユ、顔上げて』

『え?』

十和に促(ウナガ)されるまま、顔を上げる。
それと同時。
十和の柔らかい唇が、私の呼吸を妨げた。

『ふ……ッ』

え、あ、何?
舌……ッ

『は、あッ…… 十和、信号ッ』

『大丈夫、まだ赤だから』

『あ……ッ』

噛み付くようにして、再び重なる唇。

やだ、意外だ。
十和も、こんな餓えた動物みたいに激しいキス、するんだ……

《ププーー!!》

と突然、鳴ったクラクションにハッとし、十和の顔を押して離れる。

『はは、怒られちった。 後ろから』

いつの間にか信号は青。

は、恥ずかしー……
十和の顔、まともに見れないよ。

『アユ。 俺がずっと傍にいるから、馬鹿みたいな未来、想像すんなよ』

ニッと不敵な笑みを見せ、私に言い聞かす十和。

ってか、ちゃんと前向いて運転してよ。

『……ありがと』

私も、少し楽しい未来を描いてみるからさ……