空色(全242話)


本当、馬鹿だよ。
私、着けれないって言ったじゃん。

『これもあげる』

十和はそう言って、自分が身につけていたシルバーのネックレスを外した。

何て意味か解らない英語が並ぶ、小さな長方形のプレートの隣に、たった今通された小さなシルバーリング。

『指じゃなくていいから。 アユに何か身につけてほしかったんだ』

……嬉しい。
人から物を貰う事が、こんなに嬉しい事だなんて、初めて知った。

それに、私が一番気に入ったリングを、十和が間違う事なく買ってきた事。
私の視線の先を、ちゃんと見ててくれたって事。

それが、一番嬉しいの。

『薬指はしばらく空けといてよ』

『え?』

どういう事?

『アユがあの店から解放されたら、絶対に買うから。 そこに入るリングを』

それって。
それって、もしかして。

そんな事言われたら……

『十和の未来に私がいるって……事?』

そんな自信過剰な事、思っちゃうよ。

『俺も23になるし。 最後の恋愛はアユと……って思うんだけど。 迷惑?』

迷惑だなんて、そんな、そんな……

『私も、そう出来たら嬉しい』

十和を最初で最後の恋人に……
そんな幸せは、他にないよ。

『じゃあ、決まりだ。 一緒に幸せになろうな!』

牧師も、参列者もいない。
親も兄弟も、誰もいない。

だけど、私達は人知れず誓った。
永遠に続く幸せを……