いつからだろう。
大勢の人間の中から一瞬で「彼」を見つけられるようになったのは。
同じ格好。
同じ髪型だとしても、私はきっと迷わずに手を取れる。
そんな自信があった。
『じゃあ、またね』
夜になって、十和は私をアパートまで送ってくれた。
『今日はありがとう』
駐車場で少し会話し、車を降りる。
最初の頃も感じた、別れ際の違和感。
嬉しいわけでも悲しいわけでもない。
ただ体のどこかに小さな穴が開いたような、そんな違和感。
今になって知った。
それが「寂しい」という事なんだと。
私は名残惜しかったんだ。
十和とまだ一緒にいたかったんだ。
次はいつ会えるのかな。
お店に来るのかな。
もし来なかったら?
走り出した車の背中を見送りながら、頭の中で期待と不安が入り混じる。
苦しい。
肺が狭くなったような息苦しさ。
十和と別れる時は、大概「これ」に悩まされる。
こんな事は初めてで、どうしていいのか解らない。
十和に会わなければ自然と治るのか?
でも十和の顔を見ている間は、苦しくはない。
だったらずっと一緒にいれば大丈夫かも。
そんなの無理だけど。
十和にも私にもお互いの生活があるんだから。
でも、どうすればいいんだろう。
どうしたら息苦しさを止められる?
生きてる限り、ずっと続くの?
そんなの耐えられない。
ねぇ、十和。
十和は何でも知ってるでしょう?
空も海も山も人も。
だったら教えて。
私を苦しめる「これ」は、どうしたら消えるの?

