私は風俗嬢。
色んな男を相手してきた。
若くて元気な男。
中年だけど、テクニシャンな男。
顔も体も取り柄の無い男。
最高から最低まで見てきた。
そして知ったの。
男は所詮、男だって。
我が儘で身勝手。
自分が一番の生き物。
今までそうだったじゃない。
だから、誰にも心を許さなかったじゃない。
『何、ぼーっとしてんの』
そんな私がペースを乱されるなんて有り得ない。
『隙(スキ)なんか見せてると、またキスするよ?』
グッと私の鼻を摘み、意地悪に笑う十和。
残念だけど、もうキスなんかさせない。
もうしたくない。
だって……
『はは、冗談ばっか』
だってキスをしたら、もう止まれない気がするんだもの。
後戻り出来ないのは嫌なんだもの。
『つまんないなら、帰る?』
十和にさっきまでの笑みは無く、無表情。
え?
何を言ってんの?
何で、怒ってるの?
『十和が誘ったんじゃん』
それなのに帰るだなんて。
『んじゃ笑って。 今日、眉間にシワ寄りすぎ』
トンと人差し指で眉間を突かれ、バランスを崩しそうになる。
『アユの笑った顔が見たいよ』
それと同時、保ってきた厳しい顔が、少しずつ緩んでいった。
別に不機嫌だったわけじゃないよ。
頑張って、厳しい顔を作っていたんだ。
じゃないと、きっと今日は、顔が緩みっぱなしだと思うから。
そしたら気色悪いでしょ?
『どうする? 帰る?』
十和が悪いんだよ。
私のペースを乱すから。
『俺はまだアユといたいけどね』
ほら、また揺さぶる。
本当はすごく恥ずかしくて、顔を隠したいくらいなのに。
『帰らないよ』
十和といると苦しい。
苦しくて、胸が痛い。
『本当は、楽しみにしてたの』
でも、それに勝つくらい、楽しかったの。

