空色(全242話)


私は風俗嬢。
色んな男を相手してきた。

若くて元気な男。
中年だけど、テクニシャンな男。
顔も体も取り柄の無い男。

最高から最低まで見てきた。
そして知ったの。

男は所詮、男だって。
我が儘で身勝手。
自分が一番の生き物。

今までそうだったじゃない。
だから、誰にも心を許さなかったじゃない。

『何、ぼーっとしてんの』

そんな私がペースを乱されるなんて有り得ない。

『隙(スキ)なんか見せてると、またキスするよ?』

グッと私の鼻を摘み、意地悪に笑う十和。

残念だけど、もうキスなんかさせない。
もうしたくない。

だって……

『はは、冗談ばっか』

だってキスをしたら、もう止まれない気がするんだもの。
後戻り出来ないのは嫌なんだもの。

『つまんないなら、帰る?』

十和にさっきまでの笑みは無く、無表情。

え?
何を言ってんの?

何で、怒ってるの?

『十和が誘ったんじゃん』

それなのに帰るだなんて。

『んじゃ笑って。 今日、眉間にシワ寄りすぎ』

トンと人差し指で眉間を突かれ、バランスを崩しそうになる。

『アユの笑った顔が見たいよ』

それと同時、保ってきた厳しい顔が、少しずつ緩んでいった。

別に不機嫌だったわけじゃないよ。
頑張って、厳しい顔を作っていたんだ。

じゃないと、きっと今日は、顔が緩みっぱなしだと思うから。

そしたら気色悪いでしょ?

『どうする? 帰る?』

十和が悪いんだよ。
私のペースを乱すから。

『俺はまだアユといたいけどね』

ほら、また揺さぶる。
本当はすごく恥ずかしくて、顔を隠したいくらいなのに。

『帰らないよ』

十和といると苦しい。
苦しくて、胸が痛い。

『本当は、楽しみにしてたの』

でも、それに勝つくらい、楽しかったの。