空色(全242話)


もっと早く貴方に会いたかったなんて、
こんな事、思っちゃいけないのに。

私はもう真っ黒に汚れてる。
これからも止まる事なく汚れていくだろうし、今さら綺麗になんかなれない。

十和との距離は縮まらないんだ。

『コーヒー冷めるよ』

さっき引っ込めた缶コーヒーを、再び差し出す十和。

反省など本当にしてないんだろうな。
ふと見せた笑顔がそう思わせる。

笑顔を見せたら、うやむやになると思ってるんでしょ?
許してもらえると思ってるんでしょ?

『アユ、移動しよっか』

……当たりだよ。
私、十和の笑顔に弱いんだもん。

でも店は辞めないけどね。

なんて思いながら十和の顔を見る。
いつもの笑顔が、そこにある事にホッとした。

空の次に、いや、空と同じくらい見たいものが出来た。
十和の笑顔だ。

ずっと笑っていてくれたら、それ以上に嬉しい事はない。

例え私の身に何かあって、それを見られないとしても、
どこかで笑っているなら、それでいいと思った。

《ポツ……》

『え……?』

鼻筋に1粒、水滴が落ちる。
でも空は明るい。

海の水?
それにしては波が穏やかすぎるし。

《ポッ……ザー-》

考えてる間に水滴は増え、本格的な雨に。

何で?
空は晴れてるのに。
こんなのって、おかしい。

『大丈夫、通り雨だよ。 すぐ止むから』

通り雨?
それって一体……


『ほらね? もう止んだ』

しばらくして止んだ雨に十和は、無邪気な笑顔を見せた。

その頭上にはカラフルな一筋の……

『後ろ! 十和、後ろ見て!』

あまりの綺麗さに十和の体にしがみついて、「それ」へ向ける。

『虹だ。 俺、初めて見た』

そう、虹が出ていた。
私も初めて見るよ。

『綺麗……』

十和といると、初めてを沢山感じる。
知ってる事が増えていく。

生きる事がこんなに楽しいなんて。
私、知らなかった。