もっと早く貴方に会いたかったなんて、
こんな事、思っちゃいけないのに。
私はもう真っ黒に汚れてる。
これからも止まる事なく汚れていくだろうし、今さら綺麗になんかなれない。
十和との距離は縮まらないんだ。
『コーヒー冷めるよ』
さっき引っ込めた缶コーヒーを、再び差し出す十和。
反省など本当にしてないんだろうな。
ふと見せた笑顔がそう思わせる。
笑顔を見せたら、うやむやになると思ってるんでしょ?
許してもらえると思ってるんでしょ?
『アユ、移動しよっか』
……当たりだよ。
私、十和の笑顔に弱いんだもん。
でも店は辞めないけどね。
なんて思いながら十和の顔を見る。
いつもの笑顔が、そこにある事にホッとした。
空の次に、いや、空と同じくらい見たいものが出来た。
十和の笑顔だ。
ずっと笑っていてくれたら、それ以上に嬉しい事はない。
例え私の身に何かあって、それを見られないとしても、
どこかで笑っているなら、それでいいと思った。
《ポツ……》
『え……?』
鼻筋に1粒、水滴が落ちる。
でも空は明るい。
海の水?
それにしては波が穏やかすぎるし。
《ポッ……ザー-》
考えてる間に水滴は増え、本格的な雨に。
何で?
空は晴れてるのに。
こんなのって、おかしい。
『大丈夫、通り雨だよ。 すぐ止むから』
通り雨?
それって一体……
『ほらね? もう止んだ』
しばらくして止んだ雨に十和は、無邪気な笑顔を見せた。
その頭上にはカラフルな一筋の……
『後ろ! 十和、後ろ見て!』
あまりの綺麗さに十和の体にしがみついて、「それ」へ向ける。
『虹だ。 俺、初めて見た』
そう、虹が出ていた。
私も初めて見るよ。
『綺麗……』
十和といると、初めてを沢山感じる。
知ってる事が増えていく。
生きる事がこんなに楽しいなんて。
私、知らなかった。

