サァー……と囁くような波音。
温かい腕に包まれ、抵抗する事すら忘れていた。
今、十和の澄んだ瞳の中に住むのは、私だけ。
重なろうとする互いの唇に、そっと目を閉じる。
《~♪~♪》
と突然、どこからともなく音楽が鳴り響く。
『……ごめん、俺の携帯』
十和は溜め息混じりにそう言うと、私の体を再度きつく抱きしめる。
キス、だよね?
今のってそうだよね?
『め、メール?』
『うん』
『見ないの?』
『うん、後で見る』
何とも言えない気まずい雰囲気。
1秒が10秒に。
1分が10分にも感じる、重苦しい時間が流れる。
やっぱり十和、キスしようとしたんだよね……?
息苦しい程に抱きしめられながら逃げ道を探し、ようやく顔の向きを変える事が出来た。
十和の顔のすぐ下。
そこから見えたのは優しく私を見つめる瞳。
目が合った時、私を拘束していた腕がようやく解かれた。
『ごめんね?』
ぽつりと呟かれた言葉にバッと顔を上げる。
その瞬間、十和は私の首筋にキスを落とした。
『ッ……!?』
何?
何なの!?
『アユの信頼、裏切っちゃった』
意地悪なその表情からは、反省心のカケラも感じられない。
『馬鹿。 安全って言ったくせに』
でも私も、反省する事はないと思ってる。
例え、本当に唇が重なっていたとしても……

