空色(全242話)


サァー……と囁くような波音。
温かい腕に包まれ、抵抗する事すら忘れていた。

今、十和の澄んだ瞳の中に住むのは、私だけ。

重なろうとする互いの唇に、そっと目を閉じる。

《~♪~♪》

と突然、どこからともなく音楽が鳴り響く。

『……ごめん、俺の携帯』

十和は溜め息混じりにそう言うと、私の体を再度きつく抱きしめる。

キス、だよね?
今のってそうだよね?

『め、メール?』

『うん』

『見ないの?』

『うん、後で見る』

何とも言えない気まずい雰囲気。

1秒が10秒に。
1分が10分にも感じる、重苦しい時間が流れる。

やっぱり十和、キスしようとしたんだよね……?

息苦しい程に抱きしめられながら逃げ道を探し、ようやく顔の向きを変える事が出来た。

十和の顔のすぐ下。
そこから見えたのは優しく私を見つめる瞳。

目が合った時、私を拘束していた腕がようやく解かれた。

『ごめんね?』

ぽつりと呟かれた言葉にバッと顔を上げる。
その瞬間、十和は私の首筋にキスを落とした。

『ッ……!?』

何?
何なの!?

『アユの信頼、裏切っちゃった』

意地悪なその表情からは、反省心のカケラも感じられない。

『馬鹿。 安全って言ったくせに』

でも私も、反省する事はないと思ってる。
例え、本当に唇が重なっていたとしても……