「何で?」「どうして?」
幼い頃は口癖にしてた。
パパやママ。
近所のおばさん、保育園の先生。
大人の発する言葉の奥を知る事に、何の躊躇(タメラ)いもなかった。
自分が大人になるにつれ、知るのが恐くなった。
人の上辺ばかりで、他人を理解した気になってた。
【十和を知りたい】
こう思えた事はちっぽけに見えて、実はすごく大きな変化。
私の探求心が久しぶりに、疼(ウズ)いているんだ。
『そっかぁ、お母さん似か』
知らなかった事が増えていく。
それが何故か嬉しかった。
『ま、皆がそう言うだけだけど』
十和は少し寂しげな顔を見せて言う。
『片親だから、わかんないだよね。 実際のとこ』
……ああ、そうだった。
「私生児」だと、初めから十和は言っていたのに、私は何でこんな質問をしてしまったんだろう。
親の顔なんて、十和にわかるわけないじゃないか。
『ごめん……』
『ま、本当の父親に会ったら、俺とちぃっとも似てなかったんだけどね!』
と、一転して無邪気な笑顔を見せる十和。
『って、父親知ってんじゃん!』
『ごめんごめん。 アユの反応が可愛くてさ』
もう……
本当に申し訳ないって落ち込んだのに。
クルクルと変わる奴の表情。
私を不安にさせ、そして安心させる。
一喜一憂してる自分がすごく可笑しかった。
『だから言ったじゃん? 俺、親の事あんま気にしてないって』
ケタケタと笑うその姿に安心し、私も表情を穏やかにする。
『だから、アユも気にしなくていいんだって』
似た境遇の私と十和。
私は殻に閉じこもってしまった。
どうして彼はそこまで開けるのだろう。
どうして笑っていられるのだろう。
『あ、コンビニ寄ってっていい? 煙草きらしちゃってて』
何度会っても、何度話しても解らない。
いつも思う。
十和は、私が出会った沢山の男達とは全く違う生き物だって……

