違和感を感じて
笑顔を
作ってしまうようになったのは
いつからだろう


あのバス停の前に居ることが
辛くなってしまったのは
どうしてだろう




交わらなくなった目線は
どこに向けていいのか
分からなくて

どこに行っていいのかも





あれだけバスが来る音が嫌だったのに
今じゃあの音を聞くと
少し心が楽になってしまう



「じゃあな」



君はそう笑顔でいうと
もう私の方を向いてはくれない


窓越しの君の横顔が目に映るたびに
なんだか悔しくなって
強がって
バスが走り出す前に 私は駆けだしてしまう



そんな日々が続くたび
気づかないうちに
その気持ちは黒くくすんでしまった







「もう終わりにしよう」








あの恋が決まっていた事なら
これもきっと決まっていた事だ



視線が交わらなくなってしまって

2人の隙間を埋めることに
苦しくなってしまって


何が望むことか分からなくなったあの頃に

きっと強がりで望んでいたこの結末は

ひどく呆気なく訪れた






運命?
バカみたい




あの時
もっと私の心が広ければ


私がもっと君のことを愛せていたなら


もっと自分のことが嫌いなら




もっと

君を大切にできたなら





初めから
出会わなきゃよかった


初めから
何も見なければよかった


初めから
笑顔なんて見せなければよかった



幸せなんて
ならなきゃよかった







君が私を嫌って
その見えない気持ちを知ろうとすると
本当に笑顔でいられた時の思い出が
嘘になってしまうような気がするの



もうバス停の前に立つ君の目線を
幸せと呼ぶことは出来ない




君の背中を通り過ぎるたびに
あの頃の記憶が空想と同じようなものになって

このバス停に
いつも私だけが取り残される




君がもう私に笑いかけて

「じゃあな」

と手を振ることもない




バスは2人の間を切り離すように
いつも君を乗せていってしまう

私をここに置いていって






君の乗ったバスのエンジン音が後ろから
私の耳に
風にのってやってきた




「また今日もダメだったね」




いたずらに呟いて







『あの、名前…聞いてもいいですか?』








…君がいない冬は

ひどく冷たい