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私が、疑問を口に出そうと開いたと同時に、店員がやってきた。

タイミングが悪い。

私は、口を開くタイミングを失ってしまった。

そんな困った私に気付いているのか、坂上君が口を開いた。

緑色の石を探している?

まさか・・・。

私は自然と胸元へと手を当てる。

そんなハズがない。

緑色の石だけじゃ、私が持っているこの石とは限らない。

それに、このペンダントは幼い頃に出会った彼の物であって、坂上君の物なんかじゃない!

「それは、一体どんな?」

「あぁ・・・家の大事な家宝だな」

「そんな大事な物を無くしたの?」

「そうだな・・・」

だからって何故、私を付け回す必要があったのだろう。
私は、湯気が漂うコーヒーカップに視線を落とす。

「え・・・?」

ドキッ

気配を感じて視線を上に戻すと、坂上君が私に手を伸ばす。

「な・・・何?」

私が思わず身体を後ろに避けると、坂上君は、伸ばした手をそのままコーヒーカップへと持って行く。

「やっぱり違うか・・・」

「え?」

「ううん・・・何でもない・・・ごめん。もう、明日からは付きまとうことはしないから。」

坂上君は、なんだか哀しそうな表情でそういうと、伝票を持って去っていった。