なんだか教室の前の廊下に人が多いような気がする。

ううん。坂上君を見に来る生徒や坂上君のファンクラブの生徒がいるから、多いのはもはやこれも日常。

日常なんだけれど・・・いつもと少し違う。

それは教室に近づいて分かった。

(坂上君?)

そう、彼が廊下で他の生徒の声にも無表情で、立っていたから。

何してるんだろう?

私は、生徒達を避けて、その手前の扉から教室に入ろうとした。



「おはよう。外山さん」



教室に入りかけた一歩が思わず止まった。



え? 


今・・・私の名を呼ばなかった?



いや・・・そんなハズがない。
坂上君が私を呼び止めるハズなんかない。



「外山さん?聞こえなかった?おはよう」

「え!?あ・・・私?」



坂上君は、私の名前をもう一度しっかりと呼んだ。

周りの生徒もクラスメイトも全員が注目する。



「おはよう」



私は一言だけ返すと、自分の席に急いだ。

ざわつく廊下、そして教室内。

私は、どちらかと言うと静かに目立たない存在だったのに!

坂上君の一言で、全員から注目されてしまっている。


「志帆!!坂上君となんかあったの?」

様子を見ていた夢花が、私の傍に飛んでくる。

「なにもないわよ!?」

「だって、あの坂上君から挨拶するなんて!おかしいじゃん!?」

いや、ホントに・・・私が知りたい。



でも、これは始まりに過ぎなかった。

移動教室があれば、私と夢花の後ろに一定の距離を空けて付いて来る坂上君の姿がある。

これだけなら、偶然というか同じクラスメイトだし、ありえること。

なんだけど・・・。